医療数字のカラクリ

進行がん「治さない方がいい」とも言い切れない

 仮に「6カ月治療すれば80%以上の人に元気な1年が手に入る」としたらどうでしょう。そうなると「6カ月、頑張ってみようか」という人が増えるでしょう。

 ただ、そのような大きな効果があったとしても、「10%は副作用で死んでしまう」としたら、また訳が分からなくなります。たとえば有効な抗がん剤の治療といっても、100%有効ということはありません。せいぜい20%生存率が高いとか、30%高いというケースがほとんどです。さらに、この「20%、30%生存率を改善する」という数字も、平均余命と同様の平均値に過ぎません。個々の患者によっては全く効果がなかったり、逆に劇的な効果がもたらされるかもしれないのです。難しいものです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。