天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

採決後の処理をしていない生血は使用しない

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ


 狭心症で冠動脈バイパス手術を勧められていますが、正直、手術中の輸血に不安があります。輸血をせずに手術を受けることは可能でしょうか?(76歳・男性)


 輸血部などの専門科や設備が整っている病院では、手術の際の輸血は「自己血輸血」にシフトしてきていることを前回紹介しました。献血から作られた血液製剤ではなく、術前に自分の血液を採血してためておいた自己血を使用すると、術後の貧血改善など患者さんにとってさまざまなメリットがあるからです。

 今回は少し脱線して、「輸血」の現状についてお話ししましょう。

 ひと昔前の映画やドラマなどで、大きな手術に臨む医師が「すぐ輸血に対応できるように、血液型が同じ家族や知人を集めてください」なんてお願いをするシーンを目にしたことがある読者も多いと思います。しかし、そうした展開は、もう四半世紀前くらいに終わっているといえます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。