ダイエットのしすぎで「料理の味がわからなくなった」と言うHさん(45)がいらっしゃいました。
東洋医学では、口から取る食べ物を「水穀(すいこく)の精微(せいび)」、呼吸によって吸う空気を「清気」といいます。
水穀の精微と清気が2つ一緒になって、肺で「宗気」ができます。宗気は体内を下り、腎で「真気」ができます。清気、宗気、真気の3つの「気」が合わさって「元気」ができる。元気は腎にためられるので、腎が悪くなると、元気もなくなると考えます。
ダイエットなどで食べ物を取らなくなれば、水穀の精微が体内に入らないので、結果的に元気がなくなります。
しかも、胃の中にある気、「胃気」が味覚に関係しているのですが、食べ物が胃に入らなければ、胃気も活性化されないので、失調して味覚障害になります。
「だから、いくらやせたいからって、食事を取らないのはダメなんですよ」とアドバイスをすると、Hさんも「功を急ぎすぎました」と反省の様子。
気力や体力を補う「十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)」と、五味子が入っている「生脈宝(しょうみゃくほう)」をHさんに薦めました。五味子は、生薬の名前の通り五行で言う五味(酸味、苦味、甘味、辛味、塩辛い味)のすべてが含まれている生薬です。五味子茶というお茶もあり、毎日飲むと、体調を整えるのに役立ちます。
Hさんから、「味覚が元に戻りました! 何を食べてもおいしくて、体重維持が大変!」と連絡が来たのは、1カ月後のことです。
(久保田佳代/「漢方の氣生」代表、薬剤師、心理カウンセラー)
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