Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【番外編】マネーを考える

左上から時計回りに、北斗晶、つんく、今井雅之、川島なお美(C)日刊ゲンダイ

 乳がんで闘病中のタレント・北斗晶さんが抗がん剤治療をスタートされたそうです。日本乳癌学会のHPによれば、抗がん剤の治療費は13万~68万円で、最新の分子標的薬だと、216万円に上ります。患者さんの自己負担は、サラリーマン世帯の場合、その3割とはいえ、決して少なくありません。手術後に「保険に入っていないと大変なことになっちゃう」と語っていたのも納得です。

 しかし、公的保険により、医療費の個人負担が重くならないような仕組みがあります。それが高額療養費制度。保険で受けた医療費が毎月一定額を超えると、超過分が還付される制度。毎月の上限額が決まっているのです。

 計算式は省きますが、たとえば標準報酬月額28万~50万円の方が、冒頭の乳がんの分子標的薬による治療を受けた場合、自己負担の限度額は14万9430円。病院の窓口で3割負担分の64万8000円を支払っても、通常は後日、限度額との差額49万8570円が還付されるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。