Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【番外編】マネーを考える

左上から時計回りに、北斗晶、つんく、今井雅之、川島なお美(C)日刊ゲンダイ

 そんな制度があることから、民間の医療保険はいらないという考え方があります。自己負担限度額くらいなら、貯金でカバーできないことはありません。だとすれば、毎月の保険料をほかに使おうというのが“保険不要論”の根拠。

 理屈はもっともですが、がん患者の苦しい現状を知ると、保険は入っておくのが無難でしょう。俳優・今井雅之さんも女優・川島なお美さんも、それぞれ大腸がんと胆管がんで54歳で亡くなりました。北斗さんは48歳、喉頭がんを告白した音楽プロデューサー・つんく♂さんは46歳。皆さん、50歳前後。このことからも分かるように、がんは働き盛りに発症することが少なくないのです。

 厚労省の調査では、全がん患者約80万人のうち20~64歳が約26万人で、32%。仕事しながら通院している方が32万人に上ります。つまり、高額の治療費をやりくりするため、仕事を続けざるを得ない面もあると思います。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。