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【肥満症の減量手術】東邦大学医療センター佐倉病院・消化器外科

東邦大学医療センター佐倉病院の大城講師
東邦大学医療センター佐倉病院の大城講師(提供写真)

 マラドーナやKONISHIKIが受けたことで話題になった肥満症の減量手術。いま世界で年間40万例以上(半数は米国)が行われている。国内では昨年4月に術式の1つが保険適用になり、全国の年間実施数は250例ほどだ。同科の減量手術の責任者である大城崇司講師が言う。

「肥満症で当院を受診する場合、最初の診療科は糖尿病・内分泌・代謝センターになります。そこで食事療法や運動療法などの内科的治療をしても十分な効果が得られない18~65歳のBMI35以上の患者さんが減量手術の対象です」

 BMIとは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った肥満度指数。「22」を標準体重として、「25以上」は肥満とされる。「35以上」となると、身長170センチの人であれば体重102キログラム以上となる。

 肥満であれば、当然、生活習慣病を合併していることが多い。肥満症の外来患者で減量手術に至る割合は約30%。その6割以上は糖尿病や高血圧、約7割が脂質異常症(高脂血症)を持つという。

「手術をすると元の肥満体重の20~30%はやせます。しかし、減量手術は単に体重を減らすことを目的にしているのではありません。合併症の改善を含め、活動性のある生活を取り戻すのが目的です。現在、世界的には糖尿病を改善させることを第1目的としたメタボリックサージェリー(手術)という概念でも手術が行われています。手術をすることで、心筋梗塞や脳卒中など肥満関連の合併症による死亡率が9分の1に減るともいわれています」

 手術は腹腔鏡で行われ、腹部に数カ所の孔をあけて器具を挿入し、モニターを見ながら行う。術式は主に3種類あるが、国内で保険適用になっているのは胃をバナナ状に細く切除(胃の容量100ミリリットル)する「スリーブ状胃切除術」。手術時間は2時間半くらいで、入院は平均1週間。同院の患者の9割以上が希望する術式だ。

「この手術をすると食欲増進ホルモンの分泌が減り、インスリンの効きを高めるホルモンの分泌をよくするため、減量のみならず糖尿病の改善が見込めます。特に糖尿病になりたてで、BMIの高い人ほど効果が期待できます。海外からの報告によると、術後5年以上の改善率(糖尿病の血液検査数値が改善し、内服を減量・中止できる状態)は8割。ただし、再発率も4割弱あるので術後のフォローが重要です」

 また、高度肥満の患者が多い同院では、精神科との連携も重要になる。高度肥満の場合、約半数はうつ病、そううつ病、不安神経症、解離性障害などの精神疾患を合併しているという。

「精神疾患があると手術を敬遠する施設もありますが、それでは肥満症難民を出してしまいます。当院は術前から術後管理まで、チーム医療で高度肥満治療の診療にあたっているのが特徴です」

 専門家の試算では、減量手術後は医療費や食費などの削減で月平均4万3000円程度の出費が減り、年約50万円のコスト減になるという。

 その年齢が若いほど「ローリスク・ハイリターンの投資」になるのだ。

 東邦大学医療センター3病院の1施設
◆スタッフ数=医師11人(うち減量外科担当2人)
◆受診窓口(内科)の肥満症初診患者数=月間約30人
◆減量手術の実施数(2015年)=15例