家計簿を見れば病気がわかる

ミカン好き 静岡、大分、長崎、愛媛は骨が強い

(C)日刊ゲンダイ

 平均的な世帯が1年間に消費するミカン(温州ミカン)は約12.5キログラム、リンゴは約12.3キログラムで、わずかながらミカンがリードしています。

 ミカンの消費量は、静岡がトップ。上位にはミカン産地が名を連ねています。一方、最下位は沖縄で、大阪や神奈川なども下位に入っています。さらに下から6位が兵庫、8位が福岡、10位が東京というように、大都市圏のミカンの消費は低調です。東京都民はイチゴ、キウイ、グレープフルーツなどを多く消費しています。

「どうせミカンはビタミンCだけだろう」と、高をくくっていると後悔するかもしれません。ミカンにはβクリプトキサンチンという、世界が注目する健康物質が、豊富に含まれているからです。

 この物質は、ミカンの色のもとになっている物質です。ほかにはオレンジやパプリカなどにも含まれています。しかしミカンの含有量が圧倒的で、オレンジの約10倍にも達するのです。

 βクリプトキサンチンは、腸で消化吸収されたあと血液に溶け込んで、メタボをはじめとするさまざまな生活習慣病を予防する働きをしていると考えられています。事実、βクリプトキサンチンの血中濃度が高い人ほど、骨粗しょう症や糖尿病、動脈硬化などにかかりにくいことが分かってきたのです。

 それだけではありません。お酒を飲んでもγ―GTP値が上がりにくくする効果も報告されています。言い換えれば、ミカンを食べていれば、多少飲み過ぎても肝機能は悪化しにくいということです。さらに喫煙者のメタボのリスクを下げることも分かってきました。

〈表〉には、ミカンの消費量の上位県・下位県と、骨粗しょう症(骨の密度および構造の障害)の患者数(受療率)を載せました。ミカン消費量2位の和歌山県の患者数は多めですが、それ以外の県では全国平均よりも少なくなっています。ただし下位でも患者数が少ない県もあるので、ミカンを食べないと骨粗しょう症になりやすい、ということではありません。

 とはいえ、食べて損をするような話でもないでしょう。今年の冬は、毎日ミカンを、2つ、3つ食べるよう心がけてみてはいかが。何か御利益があるかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。