どうなる! 日本の医療

IT化が名医をつぶす

(提供写真)

 ところが、システム運営に役立つ上級合格者は年間30人ほど。技術者不足から、医療機関の間で技術者の争奪戦が起こりつつあるという。

 また、病院のIT化には莫大な資金が必要だ。通常、300床から499床の病院ではIT化に平均約4.9億円(10年時点、日本病院会調査)かかるという。

「IT化のコストが経営を圧迫する病院も少なくありません。実際、ソフトウエアの更新、セキュリティーの強化、IT技術者の人件費などの資金を確保するため、各診療科の先生方に“売り上げアップ”をお願いすることもあります」(首都圏の病院事務員)

 IT化のしわ寄せは患者の診療内容にまで及ぶケースもある。例えば高血圧の患者がある病院を訪ねたとしよう。かつてはその病院に所属するA先生とB先生とでは見立ての違いから、処方する薬が異なることが当たり前だった。ところが、今はIT化で病院全体の標準化が進み、同じ高血圧ならその病院のどの先生に診てもらっても同じ薬、治療法になりつつあるという。

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村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。