たばこの先端から出る副流煙や、喫煙者が吐き出した煙を吸引してしまうことを「受動喫煙」といいます。同居家族の喫煙がもたらす子供の「受動喫煙」と、虫歯発症の関連を検討した研究が、英国医師会誌2015年10月21日号に掲載されています。
この研究は、2004~10年において神戸市で出生した7万6920人の乳幼児を対象とした後ろ向き観察研究です。生後4カ月時点において受動喫煙のなかった3万4395人、同居家族に喫煙者がいるものの子供の前では喫煙しない3万7257人、同居家族による受動喫煙が明らかだった5268人の3つのグループに分けて3年間追跡調査し、乳歯の虫歯発症を比較しました。なお、出生時の母親の年齢や妊娠週、出生時体重・身長など、結果に影響を与えうる因子を考慮して解析をしています。
その結果、虫歯の発症は、受動喫煙がないグループで14%、子供から離れて喫煙したグループで20%、受動喫煙が明らかなグループで27.6%でした。受動喫煙がないグループと比較して、子供から離れて喫煙したグループで1.46倍、受動喫煙が明らかなグループでは2・14倍、統計学的にも有意に多いことが示されています。
この論文でも研究の限界として言及していますが、結果に影響を与えうる因子の補正が十分ではない印象があります。虫歯の要因は食習慣や生活習慣など多岐にわたります。したがって、この研究結果のみでは受動喫煙と虫歯発症が因果関係にあるかどうかは分かりません。
しかし、受動喫煙が子供の体に大きな影響を及ぼしうることは経験上、明らかです。受動喫煙を減らすための情報として、公衆衛生上の観点から貴重な知見ではあります。
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