天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

手術すべきか悩む3つのケース

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ


 15年前に僧帽弁閉鎖不全症の手術を受けました。1年前あたりから再び息切れなどの自覚症状が表れ、再手術が検討されました。しかし、医師からは「前回の手術による癒着がひどく、再手術すると大出血して命に関わる危険がある」と断られました。やはり、再手術は断念したほうがいいのでしょうか。(80歳・女性)


 私自身も含め、外科医が手術をするかどうか迷うケースはいくつかあります。まず、自分が頭に思い描いている手術をするにあたって、心臓や血管に到達するまでのアプローチに制限を受ける場合です。

 いただいた質問もそうですが、再手術の患者さんの場合、前回の手術による癒着がひどく、臓器や血管が複雑にくっついてしまっているためスムーズに患部にメスを入れることができないケースは少なくありません。

 また、心臓の手術をする前に食道がんの手術を受け、胸骨下、心臓の前に代用食道があるケースなども、簡単には患部に到達できません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。