Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【北の湖さんのケース】直腸がん診断から4年後の訃報は「急逝」か

北の湖敏満さん(C)日刊ゲンダイ

 直腸がんが見つかったのは2011年3月。内視鏡手術を受けたのは翌12年8月。その後も、腸の具合はよくなかったのか、大腸ポリープの切除や腸閉塞などで入退院を繰り返したそうです。

 腸閉塞は、ポリープや腫瘍などによって、腸が詰まった状態。がんが進行していたことがうかがえます。

 昨年末には、膀胱にもがんが見つかり、今年8月には両側の水腎症で入院、手術を受けています。膀胱がんから尿道に広がったがんによって、尿の流れがせき止められて、左右の腎臓がパンパンに拡張してしまったのです。

 関係者に漏らした「腰の痛み」や「目の見えにくさ」からは、骨や脳への転移がうかがえます。まさに満身創痍ですが、それでも人前では元気な姿を見せていました。ご家族が希望されていた延命治療を拒否されたとの報道もあって、「急逝」がクローズアップされています。確かに突然の訃報かもしれませんが、最初にがんが見つかってから4年が経過。必ずしも急逝とはいえないでしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。