皮膚の新陳代謝が10倍に 乾癬新薬「セクキヌマブ」の実力

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 皮膚の新陳代謝が通常の10倍速くなり、皮膚がボロボロむける乾癬という病気をご存じだろうか? 患者数は43万人と推定され、2対1の割合で男性に多い。昨年12月に新薬「セクキヌマブ」が発売され、約1年が経った。東京逓信病院皮膚科・江藤隆史副院長に聞いた。

 乾癬は感染する病気ではない。同じ風呂に入っても、セックスで肌と肌を触れ合わせても、人から人にはうつらない。原因不明で、遺伝的要因と環境要因が複雑に関係して発症するとみられている。

 乾癬には5つの種類があるが、圧倒的に多いのは「尋常性乾癬」。体中のあちこちからフケのようなもの(鱗屑)が大量に出る。

 次に多いのが、関節の痛み、腫れ、こわばりなどの症状がある関節症性乾癬。多くは皮膚症状から先に表れ、その後、関節症状が出てくるが、中には関節症状が先に出たり、皮膚症状が軽く、関節症状だけが目立つ人もいる。

「関節症性乾癬は関節炎で関節の破壊が起こり、関節が変形します。これは、元に戻らない。だから早く治療を開始することが大事です」

 乾癬の治療法は、活性型ビタミンD3製剤やステロイドなどの塗り薬、紫外線を当てる光線療法、免疫抑制剤の服用、そして4種類ある生物学的製剤による抗体療法だ。

「これまでの薬は、リウマチなどに用いられてきた薬が乾癬にも効くとわかり、使用がシフトしていったものです。今回の薬は従来薬とメカニズムが違い、乾癬に特化して開発されたものになります」

 そのため、当初は従来薬以上の効果があるかもしれないという期待があった。

「しかし実際使ってみると、従来薬と効果が同等か、上回るとしてもやや上回る程度です。決して、『これで万全』という薬ではない」

 ただ、従来の生物学的製剤を長く使い続けることで体内に抗体ができ、効き目が落ちてきてしまった患者もいる。その場合は、新たな打つ手が出てきたと考えられる。

「安全性に関しては、『結核などの副作用が減るかもしれない』という意見もありますが、今の段階ではなんとも言えず、慎重に見ていかなくてはなりません」

 来年以降、今回の新薬のセクキヌマブと同様の「乾癬に特化した薬」が続々と登場する予定だが、専門家はやはり「安全性が上回り効果は同等、あるいは安全性も効果も同等だろう」という見方をしている。

 江藤副院長が何より強調するのは「早期発見、早期治療」だ。

「皮膚に発疹が出て、かさかさ赤くなり、皮がむけてきたら、湿疹やかぶれだと思わず、すぐに皮膚科専門医を受診してください」

 皮膚科を標榜していても、専門医でなければ脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎と誤診されることもある。くれぐれも「専門医」を。

▽新薬が適用になるのは?
 新薬セクキヌマブは、従来の尋常性乾癬に対する生物学的製剤と同じく、ほかの治療が副作用などで使用できない場合に使われる。

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