薬に頼らないこころの健康法Q&A

「うつ病」だと思ったら貧血だった!?

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 日本全体で女性たちの鉄欠乏性貧血の増加は、深刻な問題となっています。ほとんどが女性、それも20~40代の女性に多く、50代以上の女性や男性にはあまりみられません。このことでお気づきでしょうが、この年代の女性は、「月のもの」があって毎月相当の量の鉄分を失います。失った分だけ補えればいいのですが、実際には鉄の摂取量は国民的な規模で減少しています。

 厚労省の平成20年国民健康・栄養調査報告によれば、1955~75年にかけては、1日13~14ミリグラム程度を摂取していたのが、85年ごろから下がりはじめ、2001年以降は実に8ミリグラム以下まで下がっています。

 国民的なレベルでの女性の鉄欠乏については、そのほかにも数々のデータがあります。日本赤十字社は、血液事業を通して国民の貧血の状態についての膨大な情報を持っています。貧血気味で献血できなかった人は、やはり20~40代の女性に高頻度に出ています。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。