健康は住まいがつくる

【高断熱住宅】睡眠中の室温が高いと睡眠効率がアップする

(C)日刊ゲンダイ

 1日の約3分の1を過ごす寝室。その睡眠環境が悪いと、「寝つけない」「熟睡感がない」など睡眠の質を低下させる。睡眠不足が続けば、子供は成長ホルモンの分泌が低下し、身長の伸びが悪くなる可能性があるという説もある。大人では、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を悪化させることが分かっている。睡眠の質が健康に大きく影響するのだ。

 それに関係するのが寝室の温度。電波センサーで睡眠の状態を探知する睡眠計を使い、暖かい日と寒い日の睡眠の質の差を調べた貴重な研究データ(57人対象)がある。各寝室の温度差は10度前後だ。

 調査を行った慶応義塾大学理工学部・システムデザイン工学科の伊香賀俊治教授が言う。

「寝室が寒い日は、暖かい日よりも入眠に約30分余計に時間がかかっています。また、寝室が寒いと熟睡時間の割合(睡眠効率)が約10%減るという結果になりました」

 では、無断熱住宅から高断熱住宅へ引っ越した場合、睡眠の質に差はあるのか。それについても、伊香賀教授の研究室は32人を対象に検証している。転居によって19人が就寝中の平均室温が上昇し、うち18人の睡眠効率が向上した。

「この検証では、転居に伴う室内の乾燥、音や振動、まぶしさなど、室内温度以外の睡眠に影響する要素の変化も考慮した上で睡眠効率を導きました。その結果、家の断熱性を高めて就寝中の平均室温が向上すると、睡眠効率が約3倍改善することが分かりました」

 高断熱住宅は、寒さだけでなく屋外の熱の侵入も防ぐので、夏の睡眠効率も向上するという。

 さらに面白いのは、家の内装が睡眠に与える影響だ。森林浴にはリラックス効果があることが知られているが、部屋の壁もある程度、木質化(木目のある内装)されていると睡眠にいい影響を与える。

「木の香りでいえば木質化が多いほど心地いいと感じますが、逆に見た目では木質化率が部屋面積あたり60%を超えると圧迫感やストレスが増えるようです。高断熱住宅で睡眠計を使って調べたところ、最も睡眠効率が向上する適度な木質化率は50%です」

 木質化率100%よりは木質化がゼロの方が睡眠効率はいい。リフォームするなら部屋面積の半分以上は白っぽい明るい壁にした方がいいようだ。

 睡眠不足が慢性化すると、仕事の遅刻や欠勤、作業効率の低下、事故などにつながる。加えて、生活習慣病の悪化から心筋梗塞や脳卒中の発症が増える。専門家の試算では、睡眠不足による日本全体の経済損失は年間3兆4700億円とされる。まずは、家の睡眠環境を見直すことが肝心だ。