有名病院 この診療科のイチ押し治療

【変形性足関節症】東京警察病院・整形外科(東京・中野)

(提供写真)

 整形外科の専門領域は多岐にわたるが、中でも脚のスネから下の足部、足関節を専門とする「足の外科」は、遅れて発展してきた分野。診断・治療に精通する医師は、全国でもまだ少ないのが実情だ。同科では、2008年から“足の外科外来”を新たに設け、専門的な治療を行っている。特に得意とするのは、扱う疾患の3割近くを占める“変形性足関節症”の治療だ。同外来を担当する原口直樹部長が言う。

「この病気は足関節の軟骨がすり減り、骨と骨がぶつかることで歩くと痛い、くるぶしが腫れるなどの症状が表れます。しかし、一般の整形外科ではあまり認識されていないので、正しい診断がされず、痛み止めの薬だけで我慢されている患者さんが多いのです」

 足関節の骨の接触面積は股や膝の関節と比べて3分の1程度しかない。体の一番下で全体重を支えている部位だが、関節ががっちり組み合っているので、普通なら骨と骨の間にある軟骨がすり減ることはない。

 変形性足関節症の発症原因は、骨折や捻挫グセなど外傷後に起こるものと、原因不明の特発性(50~60代女性に多い)のどちらかだ。

 発症には膝関節の軟骨がすり減る変形性膝関節症の有無は関係しない。国内では圧倒的に足関節の内側の軟骨がすり減る病態が多いという。

「患者さんを立たせた状態で足関節のレントゲンを撮る習慣がないのも、正しく診断されない理由のひとつです。足関節の軟骨の摩耗は立位のレントゲンでなければ分かりませんし、治療のプランも立てられません」

 治療で重要になるのは、軟骨のどの部分がどの程度、摩耗しているか。足関節のどの部分に全体重がかかっているライン(荷重線)があるのか見極めることだ。

 進行度は5段階に分類される。Ⅰ期は軟骨の部分(骨と骨の隙間)が正常、Ⅱ期はその隙間が狭くなっている、Ⅲa期は骨と骨が接触している部分がある、Ⅲb期は骨の一番高い部分がついている、Ⅳ期は軟骨が全体的になくなっている状態だ。

「正しく診断されず放置してしまうと、進行するうちに手術の選択肢やタイミングを逃してしまうことがあります」

 症状が軽ければ、靴の中敷きを用いて内側に集中している荷重線を外側に移動させる保存的治療で様子を見る。しかし、痛みが強ければ手術の対象になる。

 主な術式は2種類あり、早い段階で手術できれば足関節の可動域が制限されずに済むのだ。

「スネの骨の一部を切り、関節の傾きを修正する『骨切り術』は、関節をいじらないので可動域はあまり変わりません。しかし、この術式が適用になるのはⅢa期まで。それ以降は足関節をボルトで完全に固定する『固定術』になります。固定術は足先を上下に反らす動きがかなり制限されるのと、周辺の他の関節の軟骨が将来減る可能性があるのがデメリットです」

 同外来の初診患者の約半数は他院からの紹介患者だという。同じ整形外科でも専門領域が違えば、なかなか病気は治らない。

 スネから下の足の異常は、足の外科の専門医がいる施設を受診するべきだ。

■データ
警視庁職員で構成される財団法人自警会が1929年に開設。08年に千代田区から中野区へ移転。
◆スタッフ数=整形外科医師10人(うち足の外科担当2人)
◆同科の初診患者数(2014年)=4804人
◆足の外科の手術件数(同)=266件