家計簿を見れば病気がわかる

卵好きな県民は肉も大好きでがんが多い?

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 ゆで卵、卵焼き、目玉焼き、卵かけごはん……。卵は食卓のなかで多彩で重要な役割を担っています。

 そんな卵が大好きなのは、鳥取県民です。鳥つながりなのでしょうか、堂々の1位。1世帯当たり年間に40キロ近くも消費しています。Mサイズの卵の重さを60グラムとすると、約656個分。1日当たりに直すと約1・8個になります。

 以前、卵は「血中コレステロールを上げるから、できるだけ食べないように」といわれていました。実際、卵1個に、豚肩ロース300グラム分のコレステロールが含まれています。

 しかし、今世紀に入ってから、食事で取るコレステロール量と血中コレステロール濃度には、ほとんど相関がないことが分かってきました。卵を多く食べても食べなくても、血中コレステロールはほとんど変動しません。言い換えれば、コレステロールを気にして、卵を控える必要はないということです。

 しかし、国立がん研究センターが公開している「がん標準化罹患率」(男子・全部位)を見ると、卵消費の多い県は、いずれも標準化罹患率が全国平均を上回っています。逆に卵消費が少ない県の標準化罹患率は低めです。これはどういうことでしょう。

 もちろん、卵に発がん性があるわけではありません。特徴的なのは卵を多く食べている県は、生鮮肉の消費も多めの傾向があることです。

〈表〉には、卵の消費量の多い県、少ない県と、生鮮肉の消費量の全国順位を載せました。卵2位の奈良は肉5位、卵3位の愛媛は肉8位、卵4位の和歌山は肉2位、といった具合。逆に卵の消費が少ない県は、肉の消費も低調です。「赤身肉は大腸がんのリスクを上げる」ともいわれていますし、卵も肉もとなると、やはり栄養的に偏ってしまう可能性があります。

 卵が肉を呼ぶのか、肉が卵を引き寄せるのかまでは分かりません。ただ、すき焼きに生卵の組み合わせは、全国的に定番でしょう。ひよこが生まれるほどですから、卵の栄養バランスは完璧なはず。肉との相乗効果で、体に悪い影響が出ているのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。