これまでは、2人以上の世帯の家計を見てきました。今回から何回か、単身世帯を見ていきましょう。というのも、単身者は結婚している人と比べて、健康上の問題が多いといわれているからです。
実際、単身者は若くして亡くなる確率がかなり高いのです。〈表1〉は、配偶者の有無別に見た50代・60代の死亡人数(2014年)を示したものです。なお配偶者なしの理由は、未婚・死別・離婚などです。
50代男性の場合、配偶者ありで亡くなったのは約1万6000人。一方、配偶者なし(単身者)で亡くなったのは約1万8000人です。ところが、50代男性のうち、単身者の割合はわずか24%ほどに過ぎません。それでいて、ほぼ同数が亡くなっているのです。計算してみると、50代男性における単身者の死亡率は、配偶者ありの人の約3.6倍となりました。
同様に60代男性(単身率10%)の場合は、単身者の死亡率が約3.1倍。女性では、50代で約2.3倍、60代で約1.9倍。つまり単身者は、結婚している人と比べて、かなり短命ということになります。
しかも、未婚者や離婚が増え続けているため、今後さらに単身化が進むと考えられています。ある民間シンクタンクの予測によれば、2030年における50歳の未婚率は、男性約30%、女性約25%とか。健康における「単身者リスク」を真面目に議論すべき時期に来ているのです。
健康の基本は食事ですから、単身者の家計簿を見れば、何がリスク因子かある程度、推測できるはず。たとえば単身者は、外食が多くなりがちです。家計調査年報(14年)によれば、2人以上の世帯の外食費(1年間)は約16万7000円でした。一方、単身世帯では16万1000円。ほぼ同額を使っているのです。
さらに性別・年齢別に見てみると、〈表2〉のようになります。働き盛りの35~59歳男性で、約16万3000円。1日当たり約450円になります。弁当や総菜、菓子、家飲みの酒類などを加えると、1日当たり1000円を軽く超えます。それだけ栄養的に偏っている人が大勢いる可能性が高いのです。
次回から、個別の食品について少し詳しく見ていきましょう。
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。