役に立つオモシロ医学論文

「緑茶うがい」でインフルエンザは予防できる?

(C)日刊ゲンダイ

 インフルエンザの流行シーズンが近づきました。予防にはワクチン接種が基本ですが、その他の予防策としてマスクの着用、手洗い、うがいなどが行われています。

「緑茶でうがいをするといい」という話も聞くことがあります。本当でしょうか?

 緑茶には「カテキン」が含まれており、実験室での研究ではインフルエンザウイルスの活性を抑えることが報告されているようです。とはいえ、実際に人が行った場合の効果はどうなのでしょう。

 緑茶によるうがいが、インフルエンザ感染症をどれだけ予防できるか検討した論文は2014年5月、科学や医学分野で有名な「プロス・ワン」という学術誌に掲載されました。

 この研究は11年12月~12年2月のインフルエンザ流行期に、静岡県の高校生757人を対象としたもので、「1日3回、緑茶でうがいするグループ」(387人)と「1日3回、水でうがいするグループ」(370人)にランダムに振り分け、インフルエンザの発症を比較しました。

 研究期間中、インフルエンザ発症は、緑茶でうがいをしていたグループで4・9%、水でうがいをしていたグループで6.9%と、緑茶でうがいをしていたグループで31%低い傾向にありました。しかしながら、統計的に明確な差はありませんでした。

 この研究では対象となった高校生が緑茶か水か、自分がどちらのグループに割り当てられたのか知っており、緑茶うがいをしていたグループはより予防意識が高まった可能性を考慮すると、実際にはほとんど差がない可能性もあります。

 そもそも「インフルエンザの予防にうがいが有効な手段なのか」という議論もありますが、風邪予防の観点も含めれば、現時点では水でのうがいが費用対効果に優れるといえそうです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。