薬に頼らないこころの健康法Q&A

不登校の“息子”にどう接するか?

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(提供写真)

「なじめない」とか「違和感」といった感情は、徐々に自分というものができつつある証拠です。

「今、ここで仲間たちと過ごしているけれど、実は、僕、全然楽しんでいない」

 そんな思いを秘めながら、しかし、顔だけは笑って浮き上がらないようにしている……こんな経験を中学生は皆しています。

 思春期とは、「自分ひとりと他者全員」「小さな自分と大きな世界」といった不均衡な関係の中に投げ込まれる世代です。それは「不安」です。でもこの不安は、それこそが自分というものができつつある証拠なのです。ある程度は不安に耐えて、自分自身を鍛えていくべきだと思います。

 本紙の読者は皆大人ですが、では、あなたは職場に本当になじんでいるでしょうか。そうではなく、むしろ“完全になじんではいないが、波風を立てても仕方がないので静かに笑ってそこにいる”というのが本当のところでしょう。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。