膵臓がんリスク10~20倍増 医師に聞いた「膵炎」の怖さ

次長課長の河本準一は2度の急性膵炎で入院
次長課長の河本準一は2度の急性膵炎で入院(C)日刊ゲンダイ

 お笑いコンビ次長課長の河本準一(40)が、9月末から2度目の急性膵炎で約1カ月間入院していた。膵炎は、酒を飲む人が特に注意しなくてはならない病気だ。東京都立駒込病院・神澤輝実副院長(消化器内科)に聞いた。

★原因は?

 膵炎には急性と慢性がある。

「男性では、急性膵炎の5割、慢性膵炎の7割がアルコール性です。摂取量が多いほど発症リスクが高くなりますが、その量は人それぞれです」

 また、急性膵炎では胆石も主要な要因で、男性で2割、女性では最も多い4割を占める。

★急性と慢性の違いは?

 急性膵炎は、膵臓内では働かない膵液が急激に活性化し、膵臓を消化してしまう病気だ。一方、慢性膵炎は、膵臓内で持続的に炎症が起こり、膵臓の細胞が破壊されて徐々に硬くなる。

「かつては急性膵炎から慢性膵炎には移行しないと考えられていました。しかし、今では再発を繰り返す急性膵炎の一部が慢性膵炎に移行すると指摘されています」

★症状は?

 急性膵炎では、上腹部痛や背部痛。急に起こり、痛みは次第に増し、エビのように体を丸めないと耐えられないほどの激痛になる。放っておいても治らない。

 慢性膵炎でも、同じように上腹部痛や背部痛が起こるケースが多い。しかし、痛みは「激痛」の場合もあるが、「重苦しい感じ・鈍痛」が多い。痛みが出たり、軽くなったりを10年程度繰り返し、やがて痛みが起こらなくなる。

「しかし、治ったのではない。膵臓の細胞が壊れすぎて、痛みを感じなくなってしまったのです」

 この頃になると、体重が落ちたり、膵臓が働かないのでインスリンが分泌されず糖尿病を発症したりする。

★死に至る?

 急性膵炎は、命に関わることがある。

「最新のデータでは死亡率は2.6%ですが、重症急性膵炎になると10.1%まで上昇します」

 慢性膵炎は、すぐ死に至ることはない。しかし、安心はできない。

「がんの中でも予後が非常に悪い膵臓がんのリスクが、健常な人に比べて10~20倍高まります。しかも、定期的にチェックしていても、膵臓の状態が悪いので早期発見が困難。たいていは進行がんで発見されるのです」

 進行膵臓がんになると、打つ手がほとんどないのが実情だ。

★治る?

 急性膵炎は、要因を取り除けば治る例が多い。

「アルコールが原因なら禁酒、胆石が原因なら胆石を取る」

 ところが、慢性膵炎は「不可逆性」、すなわち「治らない」。「治療では進行を止めることに重点が置かれます。しかし最近、世界で初めての項目を入れたガイドラインが日本で作られました」

 それが、「早期慢性膵炎」だ。

★早期慢性膵炎とは?

 慢性膵炎は不可逆性で、一度発症すると膵臓がんのリスクが高くなる。そこで日本では、早期慢性膵炎からの医療の介入が試みられている。

「『治療を始めれば治る可能性があるのではないか』という段階が、早期慢性膵炎です。普通の膵炎は超音波やCTで診断できますが、早期慢性膵炎はそれではわかりません。超音波内視鏡という機器で精密検査を行わなくてはなりません」

 しかも、膵臓の専門医でないと診断は難しい。膵臓専門医は少ないが、病院のHPなどで医師のプロフィルを確認し、受診すべきだ。

「早期慢性膵炎の診断までいかなくても、慢性的に腹痛があり、飲酒習慣があるなら、胃カメラだけでなく血液検査や超音波などで膵臓を調べる。せめて慢性膵炎のチェックはすべきでしょう」

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