冬は昼が短く、夜が長い。太陽光を浴びる時間が短いため、季節性のうつ病を発症させやすい。これが医療の常識といわれています。
ならば、通常のうつ病の人が「光」を浴びることは治療の役に立たないのでしょうか? それを検証した研究結果が報告され、注目されています。
米国精神医学雑誌のオンライン版(2015年11月18日)に掲載されたカナダのブリティッシュコロンビア大学の研究です。非季節性の大うつ病性障害を患った成人患者122人を、①起きてすぐ蛍光灯による光照射を30分受け、その後に偽薬を飲む②抗うつ薬とマイナスイオン発生器による偽光治療③光照射と抗うつ薬投与④偽薬に偽光照射――に分けて、うつ病評価尺度のスコアを比べたところ、もっとも効果が高かったのは③の光照射と抗うつ薬の群で、次いで①の光照射単独群でした。
そもそも、なぜうつ病に「光」が効くのでしょうか? 理由は「朝が来た」と知らせることで体内時計をリセットし、16時間後に眠くなるホルモンを分泌させるためです。
仮に朝、光を浴びないと体内時計のズレがどんどん拡大していき、規則正しい生活がくずれていきます。その結果、「熟睡できない」「朝起きられない」となるのです。
以前、私の患者さんで「きちんと午前7時に起きて、規則正しい生活を送っているのに寝たりない」と訴える女性がいました。よくよく聞いてみると、「(部屋が)通りに面していて、窓のカーテンを開けると外から丸見えになるので、閉め切ったまま間接照明をつけて生活している」とのこと。しかも、この方がお住まいのマンションは地下通路で地下鉄駅に接続していて、ほとんど朝日を浴びていませんでした。
そこで朝、少し早く起きて朝日を浴びるように指導したところ、「よく眠れるようになった」と喜んでおられました。
蛍光灯でも構いません。朝起きたら強い光を浴びることが大切です。
当事者たちが明かす「医療のウラ側」