わかるのはあくまでも全体の確率だけです。その意味では、進行がんの人は、刑執行の日をその日の朝に知らされる死刑囚より、さらに不確定な状況に置かれています。すなわち、死ぬその日の朝になっても死期を知らされないわけです。
そう考えると、中央値の意味を正しく理解するというのも困ったことかもしれません。「生存期間の中央値が6カ月です」と聞いた時に、6カ月くらいは生きられるんだと誤解したほうがまだましで、「自分は明日死ぬかもしれない」と正しく考えられると、かえって不安が大きくなるかもしれないからです。数字に強くなると、その日の朝になっても執行の日を聞かされない死刑囚のようなものかもしれません。難しいものです。
医療数字のカラクリ