独白 愉快な“病人”たち

女優・水沢アキさん(61) 片頭痛

水沢アキさん
水沢アキさん(C)日刊ゲンダイ

 頭痛を自覚したのは19歳の時に出演した時代劇でカツラをかぶったときでした。カツラ合わせをしたのですが、長時間かぶっているとどうも頭がしめつけられ、言いようのない痛みに。当時、新人は撮影が途中で何時間空いてもカツラを外してもらえず、私は一日中耐えるのみでした。そうやって精神的に強くなったところもあるのですが、医師に話したら、実はそれが頭痛の始まりだと言われました。

 そんな痛みが救急車を呼ぶほどひどくなったのは40代になってから。休みの日は決まって明け方になると、首から肩がパンパンになって目がえぐり出されるような痛みが始まり、昼ごろには激しい吐き気と頭痛に襲われるんです。

 頭痛薬なんて飲んでもすぐに吐いてしまって効かないし、もう頭をハンマーでたたかれるような痛みが続く。しまいには胃液しか出てこないほど吐き続け、ずっとトイレにこもったままなんてこともありました。

 ところが救急車で運ばれて血液検査をしても、脳のMRIをとっても、異常がない。鎮痛剤を点滴しても痛みが変わらない。もう内科医の先生もさじを投げて、東京女子医大の「頭痛外来」を紹介されました。

 頭痛外来に行き、主治医ができたことが何より安心でした。病名は片頭痛。片頭痛って、「片」の字から、一部分がひどく痛いのだろうと思っていました。ところが、ズキンズキンという拍動性の痛みが突然、起こるのが片頭痛だったのです。

 そして、頭痛薬は我慢できなくなってから飲むものでなく、早い段階で飲むべきだったことや、頭痛薬に相性の合うものとそうでないものがあることを教えていただき、いろいろな薬を試すチャンスを得ました。

 頭痛との付き合い方がわかり、症状はかなり軽減されましたが、そう簡単に頭痛とは縁は切れませんでした。当時の私は38歳で離婚。自分から願い出たので、億万長者の元主人に慰謝料を請求されました。もちろん払いませんでしたが……。さらに、不動産投資でいくつかのマンションのローンが6億5000万円にもなり、その後にバブル崩壊……。

 とにかく借金返済に必死でした。毎日仕事で全国を駆け回り、小学生の2人の子供を育て、自分を癒やす時間なんてありませんでした。10年11カ月で借金を返済し、「これからは子供たちとのんびり暮らせる!」と思ったら、2人ともアメリカの大学に留学。正直、寂しかったですね。

 頭痛が消えたのは50代はじめです。借金を完済し、相性のいい薬に出合い、全てのストレスがなくなったおかげでしょう。女性経営者の友人たちも、皆ひどい頭痛持ちや、クモ膜下出血経験者が多くて。自分も含め、ストレスの影響を痛感しますね。

 いまは、頭痛はほとんどなし。ダンススタジオを新宿と新代田の2カ所で経営し、昨日も3レッスン受けてきました。好きなことをしているので、60代が楽しみでなりません。

 もし頭痛で悩んでいるなら、「頭痛は必ず相性の合う薬がありますから、ぜひ試してください。また、頭痛のなり始めに薬を飲むこと。タイミングが大切です。そして、無理せず仕事を休んでもいいんですよ」って伝えたいですね。

▽みずさわ・あき 1954年、東京都生まれ。17歳でドラマ「夏に来た娘」で主役デビュー。NHK「連想ゲーム」ではキャプテンをつとめ、女優としてだけでなく、司会、コメンテーター、リポーター、講演など幅広い分野で活躍。05年に主治医でもある、清水俊彦医師との共著「『頭痛くらい』で病院へ行こう」(河出書房新社)を出版。