介護の現場

精神障害を抱える高齢者を受け入れる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「幻覚」や「妄想」といった精神的な症状に代表される「統合失調症」の患者数は、厚労省の調査では約80万人(2008年)。国は在宅介護を奨励しているが、精神的な障害を抱えている患者の介護はいっときも目が離せず、家族には24時間の困難が付きまとう。

 認知症患者も含め、こうした入居者を介護する福祉施設は「特別養護老人ホーム」など大きく3施設。他に入居代が比較的安い「グループホーム」(認知症対応型共同生活介護)がある。

 高齢者層の介護と異なって、精神的な障害を抱える老人のケースは、介護する職員たちも対応に過分の神経を使う。

 近畿圏内で運営しているあるNPO法人も、こうした統合失調症や認知症の入居者9人を介護している福祉施設だ。入居費用は月に平均8万~9万円である。

「男女入居者の平均年齢は80歳前後です。その中には提携している病院から送られてくるケースもありますが、介護の施策次第で、症状が回復する入居者もいることがうれしいですね」

 こう語るのは、同施設を運営するベテランの女性理事長だ。

 それまで病院に入院していた患者は、日常の管理体制が厳しい病室で暮らしてきた。

 在宅介護の場合、腰に紐が巻かれ、徘徊しないよう、ベッドに結びつけられているケースもある。

 病院によっては窓に鉄柵がはめ込まれ、刑務所ほどではないが、安全対策を理由に、部屋への勝手な入退室も自由ではなかった。

 ところが、この介護施設に移って住居者がまず気が付くのは、どの窓にも鉄柵がないことだ。

「外の空気を吸いたくなったら、窓を自由に開けることができます。部屋に出入りするドアも24時間開閉が自由です。その分、監視する介護職員も大変ですが、入居者の精神状態が解放され、それだけでも少し元気になるものなのです」

 部屋の窓を開けたり閉めたりして、声を上げて外を眺めている。表玄関を除き、各部屋の出入りドアも開放していることから、時間に関係なく施設内を自由に歩き回っている。深夜の徘徊は、廊下に設置されているセンサーが知らせてくれる。

「私は医者ではありません。でも会話が通じない入居者がいても、何を望んでいるのか、その心を読み取ってあげるのが介護です。長く付き合っている間に入居者それぞれの心が分かってきます。そうなれば、入居者が騒ぎを起こすことが少なくなります」

 足が達者な入居者にはできるだけ散歩に同伴し、暖かい日は弁当を作り、何台もの車椅子を連ねてピクニックにも行く。

 時々、地元のボランティア団体に呼び掛け、カラオケ大会を開くと入居者は大喜び。拍手が起こり、笑いが絶えない。

 もっとも、カラオケの騒音など気にかけることもなく、会場のホールでは車椅子に乗って口を開けたまま寝ている入居者もいる。

「それでもいいのです。介護施設は特別ではありません。出来る限り在宅に近い環境状況をつくることが大切なのです」

 こうした施設は決して多くはない。しかし、精神障害を抱える高齢者であっても、受け入れてくれるところは探せばあるはずだ。