介護の現場

精神障害を抱える高齢者を受け入れる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 こう語るのは、同施設を運営するベテランの女性理事長だ。

 それまで病院に入院していた患者は、日常の管理体制が厳しい病室で暮らしてきた。

 在宅介護の場合、腰に紐が巻かれ、徘徊しないよう、ベッドに結びつけられているケースもある。

 病院によっては窓に鉄柵がはめ込まれ、刑務所ほどではないが、安全対策を理由に、部屋への勝手な入退室も自由ではなかった。

 ところが、この介護施設に移って住居者がまず気が付くのは、どの窓にも鉄柵がないことだ。

「外の空気を吸いたくなったら、窓を自由に開けることができます。部屋に出入りするドアも24時間開閉が自由です。その分、監視する介護職員も大変ですが、入居者の精神状態が解放され、それだけでも少し元気になるものなのです」

 部屋の窓を開けたり閉めたりして、声を上げて外を眺めている。表玄関を除き、各部屋の出入りドアも開放していることから、時間に関係なく施設内を自由に歩き回っている。深夜の徘徊は、廊下に設置されているセンサーが知らせてくれる。

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