「私は医者ではありません。でも会話が通じない入居者がいても、何を望んでいるのか、その心を読み取ってあげるのが介護です。長く付き合っている間に入居者それぞれの心が分かってきます。そうなれば、入居者が騒ぎを起こすことが少なくなります」
足が達者な入居者にはできるだけ散歩に同伴し、暖かい日は弁当を作り、何台もの車椅子を連ねてピクニックにも行く。
時々、地元のボランティア団体に呼び掛け、カラオケ大会を開くと入居者は大喜び。拍手が起こり、笑いが絶えない。
もっとも、カラオケの騒音など気にかけることもなく、会場のホールでは車椅子に乗って口を開けたまま寝ている入居者もいる。
「それでもいいのです。介護施設は特別ではありません。出来る限り在宅に近い環境状況をつくることが大切なのです」
こうした施設は決して多くはない。しかし、精神障害を抱える高齢者であっても、受け入れてくれるところは探せばあるはずだ。
介護の現場