エイズを知る

<2>障害者自立支援制度適用で医療費の自己負担は最大2万円

病状が安定すれば通院は年4回(写真はイメージ)
病状が安定すれば通院は年4回(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 米ハリウッドスターのチャーリー・シーンが強気にエイズウイルス(HIV)感染を告白できたのは、治療の進歩があればこそだろう。最長10年とされる潜伏期間中に治療をスタートすれば、発病を食い止め、寿命をまっとうできるからだ。その治療法は前回、詳報した。今回は、医療費についてだ。

 今井俊介さん(42=仮名)は5年前に会社の健康診断でHIV感染を指摘された。「恐らく、毎年のように旅行しているタイで、遊んでいたときに感染した」そうで、もらった相手はだれだか分からない。

 初診時は血液検査や胸部レントゲン検査のほかに診察も受けた。支払いは3割負担で1万7000円ほどだったという。実際に初診時の相場は1万5000~2万円とされている。3年ほど経過観察し、2年前から治療を受けている。

「経過観察の月イチ通院のときは、採血して、免疫の指標となるCD4の測定やウイルス量をチェックするだけです。医療費は3割負担で6000円ほど。大したことはありません。治療に入った現在は、1日に1回1錠飲む薬を処方されています。これがとても高い。1錠は約7000円で、1カ月分は約21万円ですから、3割負担で月額6万円。これに診察代と検査費が加わると合計7万円になります」

 ただし、窓口で実際に支払っている金額はもっと少ない。治療を中断しないように患者をサポートする障害者自立支援制度が適用されているのだ。

 HIV感染者は、ウイルスによって免疫機能が障害されているため、役所などで手続きすると、病状に応じて1級から4級までの身体障害者手帳が交付される。C・シーンみたいに治療を受けながら生活ができるなら、3級か4級だ。1級、2級はエイズを発病した人になる。

「主治医の診断書と手帳の申請書、源泉徴収票を役所に提出すると、1カ月ほどで手帳が届きました。手帳を持っているHIV感染者が抗HIV療法を受けていると、障害者自立支援制度によって医療費が1割負担になります。しかも、負担額の上限は収入に応じて0~2万円と決まっている。私の負担額は月額2万円です」(今井さん)

 治療開始の目安はCD4の数値で判断されるが、障害者手帳の手続きは経過観察中に終えるのが一般的だ。医療費の負担額は、表の通り住民税の所得割によって変わる。このくらいなら、働きながら治療を続けることは可能だろう。今井さんは3カ月分まとめて薬を処方してもらうため、通院は年に4回だけである。

 東京医科歯科大名誉教授・藤田紘一郎氏(感染症学)が言う。

「HIVをめぐっては、いまだに偏見が根強く、治療法やサポート体制の正しい情報が伝わっていません。C・シーンの告白は、そこに光を当てた点で、意味があります。日本の支援体制なら、ほとんどの患者さんが治療を受けられるはずです」

 病状が安定したからといって、シロウト判断で薬をやめたら、いつエイズを発症しても不思議はない。医療費負担は一生続くという覚悟が必要なのだ。