Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【患者数急増の大腸がん】予防する生活習慣とアスピリン

日本人の「メタボ化」で患者数急増(C)日刊ゲンダイ

 アスピリンといえば、鎮痛剤の“代名詞”のような存在ですが、この試験のアスピリンはちょっと違います。鎮痛剤として使われる容量は、大人で1日1000~4500ミリグラム。これよりも少ない1日40~100ミリグラムを服用すると、血栓を作る血小板の働きを抑えることが分かり、脳梗塞や狭心症の予防薬として使われています。臨床試験の容量も、抗血小板薬としての容量と同じです。

 古くからある薬で、薬価も安い。それで、本当に大腸がんを予防できるなら画期的。注目したい試験です。

 ただし、今回の試験で使われているのは、あくまでも抗血小板薬と同じ容量で、アスピリンが含まれる市販の鎮痛薬とは違いますから、くれぐれも市販薬をやみくもに飲み過ぎないでください。飲み過ぎると、アスピリン潰瘍といって、胃の粘膜がただれ、潰瘍ができることがあります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。