検査では異常見えず 胃不調「機能性ディスペプシア」とは

合う薬を手探りで見つけることが必要
合う薬を手探りで見つけることが必要(C)日刊ゲンダイ

 忘年会のシーズン真っ盛りで、胃の不調を感じやすくなった。「健康診断受診者の11~17%が患者」といわれるのが「機能性ディスペプシア」。昔は胃下垂や慢性胃炎と呼ばれ、胃の痛みやもたれ、食後膨満感、胃の不快感などが続くが、検査を受けても異常が見つからない。知っておくべきことを国立国際医療研究センター消化器内科・秋山純一診療科長に聞いた。

 機能性ディスペプシアは、採血や画像診断などでは異常が見られない。治ったかどうか、客観的な評価ができないのが厄介だ。原因も、体質、ストレス、食生活などが絡み合い特定しづらい。そのため、治療を受けてもなかなか症状が改善されない人が多い。

 しかし、中には適切な診断・治療が行われていないことで改善されないケースもある。まず、そもそも胃カメラを受けているか?

「胃の不調(ディスペプシア)が長引く場合、胃潰瘍、胃がん、逆流性食道炎を調べなくてはなりません。また、ピロリ菌があれば、除菌治療で著効することがあります」

 過敏性腸症候群、胆管の運動機能低下、小腸の腸内細菌の異常なども症状が似ている。

 いずれも否定されれば機能性ディスペプシアの治療になる。大きく分けて症状には「空腹時に胃がキリキリ痛む=心窩部痛症候群」と「食後もたれる=食後愁訴症候群」がある。

 前者は胃酸の分泌を抑えるPPI(プロトンポンプ阻害薬)、後者は胃の運動機能を改善する薬が用いられる。13年には新薬が承認された。

「食後愁訴症候群に対する治療薬として画期的な薬と評価されており、中には非常に効く患者さんもいます」

 先述の通り、機能性ディスペプシアは客観的な評価ができないので、「薬を飲んだらどうなるか」を見ることになる。主治医に薬の効き具合をはっきり伝えて、合う薬を手探りで見つけながら、気長に付き合うことが必要だ。

■原因は「鉄サプリ」

 次に、いま飲んでいる薬をチェックしたい。

「胃の不調を来す薬として、鎮痛薬、抗生物質、サプリメントの鉄などがあります」

 過労やストレス、睡眠の質も大きく関係している。心身いずれのストレスも、機能性ディスペプシアの症状を悪化させる。睡眠を十分に得られていなければ、身体的ストレスは増大し、胃に悪影響を与える。

「自律神経のバランスが崩れて胃酸の分泌が過剰になり、胃の運動に異常を来して胃の不調が生じます。眠りの質が悪い人は、安定剤などの服用も含めて医師に相談したほうがいい」

 薬を飲んでもよくならない。生活を改めても、睡眠を確保してもダメ――。

「加えて、お酒の量が多い、体重が減ってきた、夜間に痛みで目が覚める場合、膵臓がんや膵炎の検査を受けることをお勧めします」

 超音波やCT、可能であれば、さらに進化した治療機器「超音波内視鏡」の検査を。慢性膵炎は発症すればなかなか治らず、膵臓がんのリスクを上げる。しかし、最近の日本では超早期から治療を始め、改善を試みる動きがある。

 まずは検査をしてみないと、当然ながら自分がどういう状態なのかはわからない。

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