あの“激痛”を少しでも和らげたい 「尿路結石」4つの疑問

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 これまで経験したことがないほどの激痛だった――。尿路結石の発作で病院に担ぎ込まれた患者の多くがそう口にする。健康診断で「腎臓に小さな石がある」ことを指摘され、経過観察中なんて人も多いはず。いたずらに怯えなくて済むように尿路結石をしっかり理解しておきたい。

 尿路結石とは、腎臓で作られた結石が、尿の通り道である「腎臓→尿管→膀胱→尿道」のどこかで詰まってしまう疾患だ。その多くは腎結石と尿管結石で、腹、背中、腰のあたりがなんだか痛いなと思っているうちにみるみる痛みが酷くなり、七転八倒して病院に運ばれる患者も多い。そんな事態を避ける方法はあるのか。国際医療福祉大学三田病院泌尿器科/尿路結石破砕治療センターの荒川孝教授に聞いた。

Q1.なぜ、それほど激痛なのか

 結石は腎臓の奥にある乳頭という場所で作られる。それがある程度の大きさになると乳頭からはじき出され、尿管に落ちてくることで痛みを感じるようになる。

「結石が移動する際に尿管が直接刺激されて出る痛みもありますが、激しい痛みは腎臓の内圧が高まることで起こります。尿管の直径は広がっても5ミリ程度で、それよりも大きな結石は尿管のどこかに詰まってしまう。尿管がふさがれているのに腎臓では尿が作られるため、尿管の上流に尿がたまっていく。そうなると腎臓の内圧が急上昇して腎臓の被膜が伸ばされ、激痛が起こるのです」

Q2.結石が小さい段階で処置できないのか

 結石が小さければ、移動しても痛みが少ないはず。そう考える患者も多く、小さいうちに外科治療でさらに細かく砕いてほしいという要望もあるという。

「しかし、腎臓の奥の乳頭で作られた結石は、ある程度の大きさにならないとはじき出されません。乳頭にある段階でいくら細かく破砕しても体外に排出されることはないので、意味がない」

 尿路結石を治療するには、ある程度の痛みは覚悟する必要があるということだ。

■治療のタイミングは見逃さない

Q3.痛みが少ない治療法はないのか

 尿管結石の治療は、結石の大きさが5~6ミリ程度なら利尿剤や尿管拡張剤を服用し、水分を多く取るなどして自然排石を促す。しかし、7ミリ以上の結石や、1カ月以上も排出されない場合は外科治療を行う。

 大きく分けて、(1)体外から衝撃波を当てて結石を破砕し、尿と一緒に排出させる体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、(2)尿道から直径2~3ミリの棒状の細い尿管鏡を挿入して、結石を破砕したり取り出したりする経尿道的尿管結石破砕術(TUL)、(3)背中に約1センチの穴を開け、腎臓に内視鏡を挿入して結石を砕く経皮的腎結石破砕術(PNL)の3種類がある。

「結石がある場所にもよるが、大まかにいうと10ミリ未満ならESWLが第1選択肢、10ミリ以上ならTULかPNLになります。ESWLは麻酔なし、外来でできるため患者さんの負担が少ない。TULは尿道から尿管鏡を入れるので全身麻酔や腰椎麻酔が必要なうえ、入院が必要になる。また、破砕した結石を排出するため、尿管にステントを留置するなど負担が大きい。腎臓に管を挿入するPNLはさらに侵襲が大きくなります」

 近年、自由に曲がる軟性尿管鏡が登場し、奥にある腎結石にもTUL(f―TUL)が行えるようになった。しかし負担を考慮すると、ESWLが行える段階までに治療を始めるべきだという。ただし、ESWLを2回程度やっても結石を破砕できない場合は、TULに変更したい。

Q4.痛みを少なくするために重要なことは?

「人間ドックなどで小さな結石があると指摘され、『様子を見ましょう』といわれた時点で泌尿器の専門医に診てもらうことが大切です。自分の結石がどんな段階にあるのかを把握し、治療を始める適切なタイミングを逃さない。結石が大きくなってきた、尿管に移動しているかもしれないといった段階で治療を始めれば、痛みが少なくて済むケースもあります。発作に備えて薬を処方してもらうこともできるし、自分の痛みの原因が分かっていれば、それだけで痛みは緩和されるものなのです」

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