当事者たちが明かす「医療のウラ側」

健康のカギは長時間の速歩き

(C)日刊ゲンダイ

 毎晩、ネットで海外の医学論文を読むことを趣味にしています。先日、面白い論文を目にしました。慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院した患者さんが退院するときの歩行速度が、その後の再入院の予測に役立つというのです。

 COPDとはこれまで「慢性気管支炎」「肺気腫」と呼ばれていた病気のことで、たばこの影響によって気道や肺胞に炎症ができてしまい、肺の働きが低下するものです。正常な呼吸が困難になり、せき、たん、息切れなどの症状が見られます。

 英国の研究グループがCOPDで入院した213人の4メートル歩行速度を測定。退院後90日の再入院との関係を調べました。それによると、90日までの再入院率は「4メートル歩行速度が遅いほど高い」という関係が認められたそうです。

 なんとも不思議な気がしますが、「歩行速度と健康」についての研究はこれまでも多数報告されています。例えば、30~55歳の女性1万3535人の歩行速度(調査時と9年後)を調べ、70歳になったときの健康状態との関連を分析した研究があります。速度が速ければ速いほど、がん、糖尿病、心臓疾患、脳疾患、認知症などにかからず、健康な状態でいる確率が高いと報告されています。

 むろん、歩けば歩くほど健康にいいことは別のさまざまな論文でも紹介されています。「1日30分以上、1週間で計2時間以上速歩きすると善玉コレステロールが増える」とか、「1週間に3~5時間歩く人は1時間未満の人に比べて乳がんになりにくい」といった研究もあります。

 無理して走ったりしなくても、速歩きを長時間行うだけで人は健康を維持できるのです。さっそく、患者さんにお話ししようと思います。