家計簿を見れば病気がわかる

50歳の人 今後10年間にかかる保健医療費約150万円

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 単身者から2人以上世帯の家計支出に戻りましょう。ただ、今回は「都道府県別」ではなく、「世帯主の年齢別」でみていくことにします。

 健康や病気との関連でいちばん気になる数字は、やはり医療費などの出費でしょう。家計調査には「保健医療」という項目が立てられています。単に医療費だけでなく、関連する出費に仕分けされ、集計されています。

 分類項目は、医薬品(市販薬)、健康保持用摂取品(サプリメント)、保健医療用具・器具(大人用・子供用おむつ、メガネ、コンタクトレンズ、生理用品等)、保健医療サービス(医療費、歯科医療費、出産費等)の4分野です。

 各世代の1世帯・1年間(2014年)の出費は、表のようになります。当然のことながら、年齢が若いほど少なく、年齢が上がるほど増えていきます。世帯主が30代の家計では約11万円ですが、70代になると18万2000円ほど。しかも、若い世帯のほうが家族が多めです。30代は1家族が約3.7人。70代では約2.4人。したがって1人当たりの出費に直すと、30代は3万円ですが、70代では7万5000円。つまり2.5倍も多いのです。

 表の数字を使うと、自分と家族がこれから保健医療にどのくらいの金額を使うことになるか、目安を立てることができます。たとえば、いま50歳の人が60歳になるまでに使う金額は約150万円と推計できます。ただし、この数字は物価や消費税の動向によって変動するはずです。それでも、現行の保険医療制度が維持される限り、おそらく200万円を大きく超えることはないだろうと考えられるのです。あまり長期の予想を立てても仕方がないですが、5年から10年先までは劇的な変化はなさそうに思われます。

 もちろん、あくまでも平均値の話です。思わぬ病気やケガで、出費がかさむことも考えられます。反対に、家族全員が健康に乗り切れる可能性もあるわけです。

 今後10年間の健康医療への備えをいくらぐらいと想定しておくかは人それぞれ。しかし、平均より少し多めの出費に耐えられるようにお金と気持ちを準備しておけば大丈夫でしょう。それよりも安くついたら、ラッキーと思って、家族旅行でもすればいいのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。