しなやかな血管が命を守る

米国立衛生研究所の「最高血圧120以下を目指せ」は本当か?

東邦大学佐倉病院の東丸貴信教授(C)日刊ゲンダイ

 その結果、120mmHg未満群は140mmHg未満群と比較して、心血管病イベント(心筋梗塞などの急性冠症候群、脳卒中、急性非代償性心不全、心血管死)が約30%、死亡が約25%少なかったことが明らかになったのです。対象者のほとんどに、心不全治療作用がある利尿薬が併用されています。

 現在の内外のガイドラインでの降圧目標は「140mmHg以下」です。この研究結果から、「血圧を120mmHg以下に厳格にコントロールするように変更した方がいいのではないか」との声が上がりそうです。本当に、すべての高血圧症の人たちの血圧目標を今より20下げることが正しいのでしょうか?

 答えは「ノー」です。「単純に変えることはできない」というのが私の考えです。このSPRINT研究では、心不全発症と心血管死のみが大幅に減少していますが、これまでの研究報告と同様に、脳梗塞、心筋梗塞などでは差がありません。

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。