しなやかな血管が命を守る

米国立衛生研究所の「最高血圧120以下を目指せ」は本当か?

東邦大学佐倉病院の東丸貴信教授(C)日刊ゲンダイ

 また、血圧の下げ過ぎで、めまいや転倒リスクはやや増加しています。さらに、利尿薬などの併用によって、腎臓が悪くなる人も増えています。

 心不全治療作用がある利尿薬を増やして血圧を下げると、利尿作用によって、心不全が起こりにくくなり、ひいては心血管死が減るということになります。日本でも多く使用されているカルシウム拮抗薬など他の薬を増やして血圧を下げても、同等の作用があるかどうか、この研究からだけではわからないのです。

 その上、今回の研究期間は3年余りという短期であり、腎機能悪化、ナトリウム、カリウムなど電解質バランスの乱れ、めまいによる転倒リスクなどは、長期に観察して初めてその大きな影響が出てくると考えられます。

 降圧の方法や目標値は人により微妙に異なるはずです。この研究でいえることは、「血圧下げ過ぎに耐えられる心不全リスクのある高血圧がある人の多くで利尿薬を併用して血圧が厳格にコントロールされると、心不全とこれによる死亡が予防される」ということでしょう。

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。