どうなる! 日本の医療

税金のためにボーナスカットも… 「消費税」が大病院を潰す

 東京の医療崩壊の予兆を書いた前週の記事は大きな反響があった。東京の私大病院は利益幅数%の薄利にもかかわらず、他の地域より2割は高い人件費により経営が圧迫されていることを紹介した。

 しかし、都内の私大病院の経営を圧迫する要因は他にもある。東京大学医科学研究所の上昌広特任教授が言う。

「昨年、5%から8%にアップされた消費税増税です。大学病院に限らず、病院はこの消費税値上げにより、医薬品の仕入れ価格を3%余計に負担することを強いられています。しかし病院収入となる医療費は変わらないため、消費税の増税部分は患者に請求できないまま、病院の持ち出しに。それが病院経営をさらに圧迫しているのです」

■ボーナスカットの病院も

 たとえば、外国人患者を積極的に獲得するなど先進的経営に取り組むことで有名な亀田総合病院(鴨川市)では、職員のボーナスを対前年比5~6%カットしたと一部新聞が伝えた。同病院の消費税の支払額が、前年度より4億円増えたためだという。

「厚労省も損税補填のため診療報酬を1.36%引き上げてはいる。しかし、それぐらいの引き上げでは焼け石に水で経営改善にはつながらなかったということです」

 2016年に診療報酬が実質マイナスになる中、再来年には消費税がさらに2%アップされ10%になる予定だ。都内や首都圏の病院は、ますます経営が圧迫されることになる。その解決策は“弱者の切り捨て”につながる。

「かつて、有明がんセンターが有明移転の借金等で存続を危ぶまれたことがありました。その窮地を脱し経営再建できたのは、不採算部門を縮小して他の病院より優位な外科部門を強化したためです。おかげで09年の1億4000万円の赤字が12年には32億円の黒字になりました。都内の私大総合病院も、不採算部門から撤退、強い部門を強化するしか生きる道はないかもしれません」

■消費税が大学病院を潰す本末転倒

 少子化が進む都内では、すでに小児科や産科などからの撤退が相次いでいる。さらに総合病院が消えれば弱者を中心に医療難民が出てくることは避けられない。

 本来、消費税は弱者を守るための社会保障費に充てられるはずではなかったか。消費税が大学病院を潰し、弱者である患者を苦しめるなど本末転倒だ。この失政のツケを政権与党はどう支払うつもりなのか。

村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。