家計簿を見れば病気がわかる

男性独身者は妻帯者の2倍もサプリ代を使う

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 家計調査の保健医療分野には、「栄養剤」と「健康保持用摂取品」という項目があります。栄養剤とは、ビタミン剤、肝油ドロップ、カルシウム剤、薬用酒など。健康保持用摂取品は健康食品などのことです。世間によく知られているトクホ(特定保健用食品)や、あまり知られていない栄養機能食品などもこのカテゴリーに入ります。国が定めた規格基準にしたがってビタミンやカルシウムを含んでいる食品のことで栄養剤と同じようなものですが、主に法律上の理由から別物として扱われています。

 面倒なので、今回は全部まとめて「サプリメント(サプリ)」ということにしましょう。

 2人以上の世帯が1年間(2014年)に使ったサプリの金額を〈表1〉にまとめました。年齢が上がるほど、サプリにかける金額も増えていることが分かります。50代で1万7000円、60代で2万1000円、70代では2万8000円。中高年は、サプリの重要なお得意さんになっています。病院にかかった費用が、それぞれ3万5000円、5万3000円、4万8000円ですから、サプリへの支出はバカになりません。

 しかし独身者は、もっとサプリにお金をかけています(表2)。働き盛りの男性で8000円近く、女性では1万3000円近くになります。2人以上の世帯の平均人数は、30代・40代で3.7人、50代で3.3人、60代でも2.7人。ですから、男性独身者は既婚者1人当たりと比べると2倍前後、女性では3倍前後もサプリにお金を使っている計算です。

 サプリを飲んだ分だけ健康になり、病院費用が抑えられればいいのですが、実際のところどうなのか。これだけの数字からは分かりません。しかし、医者に治せない慢性疾患や膝・腰の痛みなどが、サプリでよくなるとも思えません。

 サプリをより多く取っている独身者のほうが、50代・60代での死亡率が断然高いという事実があります。つまり、既婚者の2倍も3倍もサプリを取ったところで、食生活や飲酒・喫煙に問題があれば、がん、心臓病、脳卒中などを十分に防げないということはいえるでしょう。サプリは主役ではなく「補助」に過ぎないのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。