薬に頼らないこころの健康法Q&A

荒れる息子にどう接するか?

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 器物損壊、窃盗、無免許運転などの触法行為に対しては、責任をとらせていいと思います。鑑別所に入ったのも、彼にとっては必要な経験だったと思います。そうしないと、彼にはいつまで経ってもルールというものが分からないでしょう。

 ご子息の逸脱行動には、「ファウルラインがどこだか教えてくれ」という大人たちへのメッセージも含まれていると理解するべきです。ここで大人たちが優柔不断な態度をとると、彼はいつまで経っても「どこまではOKなのか、どこからは許されないのか」が分からない。結局のところ、またも無益な破壊行動を繰り返すでしょう。

 その一方で、「敗者復活戦」の機会を与えることも必要です。ご子息も可能性のある若者です。大人たちとしては、彼に対して規範を叩きこむ厳しさとともに、次のチャンスを用意する優しさをもって臨むべきでしょう。

 学業、資格取得、就労などを支援し、ご子息が自力で未来をつくっていけるよう、敗者復活戦の具体案を一緒に考えてやることが必要でしょう。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。