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【スポーツのケガ】日本鋼管病院・スポーツ整形外科センター(神奈川県川崎市)

手術中の様子
手術中の様子(提供写真)
必要なら積極的に「手術」

 同センターは、一般の整形外科とは別(スタッフは重複)に設置されたスポーツが原因とされる外傷や障害を専門に治療する部門。多い疾患は、膝前十字靱帯損傷、半月板損傷、野球肘・肩、足首の靱帯損傷(捻挫)などだ。

 1985年に同院に着任した栗山節郎・整形外科統括部長(写真)が、全日本スキー連盟のチームドクターや日本体育大学非常勤講師などを務めていた関係から、プロから学生まで幅広い層のスポーツ選手が治療に訪れている。

 スポーツ整形外科が一般の整形外科と違うのは、早く元の“スポーツができる状態”に回復させることを目的とするところだ。栗山統括部長が言う。

「たとえば患部をギプスで固定すると、スポーツ選手が関節の可動域や筋力の低下をリハビリで元の状態に戻すには、固定期間の3倍の時間がかかるといわれます。しかし、それではそのスポーツのシーズンが終わってしまいます。確実な診断をつけて、必要なら積極的に手術をして早くリハビリを開始し、早く復帰させる。その目標に応えるのが、私たちの役割です」

 同センターが特に得意とするのは、整形外科領域の手術の中で最も難易度が高い「膝前十字靱帯再建術」。その手術件数は全国でも上位に入る。

栗山節郎整形外科統括部長
栗山節郎整形外科統括部長(提供写真)
競技復帰に重点置いたリハビリ施設

 膝前十字靱帯はジャンプ着地や急なターン、切り返し時に損傷しやすく、バスケ、スキー、サッカー、バレーボールなどの種目で起こりやすい。放置すると膝の亜脱臼を起こすので、スポーツ継続は難しく、選手生命に関わる外傷だ。

「再建術は、患者さんの太股内側の腱を取って膝に移植する手術になります。腱を取る太股は2~3カ所、膝は3カ所を小さく切開して関節鏡を使って行います。手術時間は1時間くらいで、リハビリ指導を含めた入院期間は2~3週間です。リハビリは術後3日目から開始します」

 スポーツ整形外科の治療で、最も重要になるのがリハビリの部分だ。同院には脳神経外科はなく脳卒中のリハビリ患者は少ないので、競技への復帰に重点を置いたリハビリ施設を充実させている。

 施設内にはプール治療室があり、フィットネスクラブ用のトレーニングマシンも多数設置、メーンのリハビリ室は850平方メートルの広さだ。

「個々の競技種目、レベルに合わせたリハビリメニューを細かく処方するのが当センターの特徴です。再建術を受けた患者さんでは、術後3カ月でジョギング、5カ月後にダッシュや軽くジャンプ、術後9カ月での競技復帰が目安です」

 スポーツ選手の膝前十字靱帯損傷は復帰後、治療中の遅れを取り戻そうと無理をするので、手術した膝や反対側の膝を再び損傷するケースが比較的多い(全体平均6%)。そのため同センターでは再発予防として、プレー中のフォーム・姿勢を改善させる指導を積極的に行っているという。

■1937年、川崎市初の総合病院として設立。
◆スタッフ数=医師11人
◆整形外科全体の年間初診患者数(2014年)=1921人(うちスポーツ関連患者約20%)
◆スポーツ外傷の手術件数=年間約300件