天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

欧米で行われている脳梗塞予防は左心耳閉塞術

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 しかし、「現時点で一般的に確立された方法はありません」と突っぱねられてしまったときは、左心耳縮縫術を実施している病院を探さなければなりません。病院のホームページなどをチェックして、左心耳縮縫術をPRしている施設に相談してみてください。

 11月に開催された米国心臓協会学術集会では、われわれがこれまで蓄積してきた左心耳縮縫術の有効性に関するデータを発表しましたが、これからさらに多くの検証を重ねていかなければなりません。

 全国的に一般化するまでにはもう少し時間がかかるでしょう。

■日本でも浸透する可能性が高い

 ただ、比較的早い段階で浸透していくことも考えられます。欧米では、心原性脳梗塞を予防するため、左心耳に対する新たな治療が行われているからです。

 われわれは袋状になっている左心耳を糸で縫う方法を行っていますが、欧米では、カテーテルを使って血管の中に器具を留置して左心耳を遮断する方法や、安全な“クリップ”を使い、左心耳を挟んで閉鎖する方法が登場しています。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。