家計簿を見れば病気がわかる

金持ちが年間で使う「マッサージ代」は貧乏人の43倍

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 保健医療分野への支出は、所得が多い家庭ほど増える傾向があります。所得200万円未満の世帯では7万1000円、対して1500万円以上の世帯では約25万円です。しかし、医療費や歯科医療費については、所得格差ほどの開きはありません。では一体、高所得家庭は何にお金を使っているのでしょうか。

 そこで家計調査の細目を調べてみると、3つの項目が浮かび上がってきました。「サプリメント」「診療以外(健康保険外)のマッサージ」「その他の保健医療サービス(人間ドックなど)」の3つです。年収200万円未満の家庭と1500万円以上の家庭と比べると、「サプリ」が4.3倍、「その他の保健医療サービス」は4・7倍、「マッサージ」にいたっては、なんと約43倍もの開きがあります。高所得者ほど、健康維持にお金を使っているのです。

 しかし問題は、使った金額が本当に健康や寿命に役立っているかどうかです。

 現時点では、サプリの摂取量が寿命に影響を与えるかどうかは明らかではありません。ただ、人間ドック等を受ける習慣がある人は、それだけ健康に気を使っているので大病になりにくいという研究があります。マッサージ等もストレスを取り除き、心身ともにリフレッシュする効果があるでしょう。所得と健康は、比例するのかもしれません。

■低所得者ほど脳卒中のリスクが上がる

 実際、低所得者は高所得者と比べて体調不良になりやすく、うつ病や自殺率が高く、早死にするリスクが高いことが世界中で続々と明らかにされつつあります。日本でも、2009~2013年度に行われた「社会階層と健康」研究(文部科学省)が知られています。それによれば、低所得層ほど仕事のストレスが大きく、脳卒中のリスクが高いそうです。またとくに女性では、低所得層ほど心臓病にかかりやすいという結果が出ています。

 もちろん、サプリやマッサージの有無が直接的な原因というわけではありません。低所得者の食事の栄養バランスが偏っていることが主な原因と考えられています。しかし、サプリ、マッサージ、人間ドックなどへの出費の多寡は、家族と自分が健康に暮らせるだけの経済的余裕の有無を、反映する指標といえそうです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。