薬に頼らないこころの健康法Q&A

引きこもりのわが子にどう接するべきか?

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(提供写真)

■若者は退屈には耐えられない

 息子さんの場合も、ずっと家にこもっている日々でしょうから、退屈しているはずです。それに、16歳の若い肉体にふさわしい活動を行っていませんから、体の調子もよくないはずです。この程度がわかれば、もう十分です。

 若者は退屈には耐えられません。だから、わくわくする経験であれば何でもいいのです。とにかく息子さんを誘ってみましょう。最初は勉強とは関係ないことがいいでしょう。もし、お父さまの趣味がゴルフなら、一緒に打ちっぱなしに行ってみてもいいでしょう。スキーやスノーボードが好きなら、スキー場に連れて行ってもいい。そのほか、乗馬、サーフィン、カヌーなどアウトドア系のスポーツは、何であれ若者は興味を持つはずです。

 息子さんがスポーツに苦手意識があるようなら、野外でのキャンプ、釣り、バードウオッチングでもいい。親戚の酪農家の家に滞在して、牛や豚の世話をするのだっていいのです。鉄道好きなら鉄道旅行でもいいし、岩石や鉱物に興味があるなら採集旅行に出てもいいでしょう。文学少年ならば、作品の舞台を訪ねてみる日帰り旅行。絵が好きなら、美術館や画廊を回ってみてもいいでしょう。機械が好きなら、マウンテンバイクでも買って、構造・機能を研究しつつサイクリングもやって、心身ともに充実した時間を過ごすのもいいでしょう。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。