薬に頼らないこころの健康法Q&A

“思春期の不安”に薬は必要か

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(提供写真)
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は要注意


 17歳、高校3年生女子の母親です。2年生ごろから起床時に頭痛やふらつきがありました。3カ月前の朝礼の際に過呼吸発作を起こして倒れてしまい、救急車で総合病院へ。そこの小児科から紹介され、近くの精神科クリニックに通うようになりました。精神安定剤を1日2回、さらに不安時頓服薬として別の種類の安定剤ももらっています。ただ、このところ1日2回の安定剤では不安や動悸が治まらず、不安時頓服薬を1日3回くらい使うこともあります。精神科の先生は、頓服薬の使用を勧めるのですが、薬の量が増えていくので、親としては心配です。


 お嬢さまがお使いになっている「安定剤」というものの詳細はよくわかりませんが、仮にそれが「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」であるとするなら要注意です。以下、お嬢さまのお薬がベンゾジアゼピン系抗不安薬であると仮定して述べていきます。

 ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、本邦で「安定剤」として多くの医師が処方しています。精神科の専門医のなかにも、この薬剤をかなりの量、長期間にわたって処方している人がいます。しかし、諸外国の学会はこの薬剤の長期使用に警鐘を鳴らしています。理由は、依存性があるからです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。