薬に頼らないこころの健康法Q&A

“思春期の不安”に薬は必要か

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(提供写真)

 お嬢さまは、頭痛、ふらつき、不安、動悸、息切れ、震え、過呼吸などがあって、それを抑えるために安定剤を使い始めたはずです。それを飲むと劇的に効いていたことでしょう。多分、今も飲めばスッと効く感じがあるはずです。だから、「薬、薬」と薬を使いたがるのだと思います。

 でも、おそらくはお嬢さまもお気付きだと思いますが、初めて使ったころと比べれば、いまひとつ効果がよくない。それに、薬が切れるころになると、またしても同じ症状が出る。だから、薬が切れないうちにまた薬を飲もうとして、その結果、薬が増えていってしまったのだと思います。

■未成年者が自分の判断で飲むべきではない

 この薬剤は、半世紀前に登場した際は「依存性の低い安全な薬剤」として喧伝されていました。しかし、それは間違いであったことが判明しました。1980年代ごろから諸外国の学会はこの薬剤の依存性について警告を発していて、医師たちはすでに処方を控えるようになっています。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。