健康は住まいがつくる

熟睡には「電球色」、目覚めは「昼光色」が必要

(C)日刊ゲンダイ

 日本人の成人の5人に1人は、何らかの睡眠の問題を抱えているといわれる。住宅環境の中で、最も睡眠に影響するのが照明(光環境)だ。寝る前の照明の使い方が悪いと、「寝つけない」「熟睡できない」などの睡眠障害の原因になる。

 なぜ、そんなことが起こるのか。生体リズムに及ぼす光の影響を研究している福岡女子大学・人間環境学部の森田健教授に聞いた。

「夜になると自然と眠くなるのは、人の生体リズムによって脳から『メラトニン』という睡眠ホルモンが分泌されるからです。そのメラトニンの分泌が高まる2~3時間前に、間違った照明の光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制されてしまうのです」

 メラトニンの分泌が始まると、それに合わせて体は休息に備えて代謝量を減らす。その結果、深部体温が下がり、眠気が生じるのだ。メラトニンの分泌は4~5時間後にピークを迎え、その後は明け方に向けて分泌量が徐々に減少。深部体温も上昇していき、翌朝の活動に備える。これを繰り返しているのが睡眠のリズムだ。

「メラトニンの分泌には、光の『量』と『質』の2つが関係します。量は、夜間の照度レベルが明るければ明るいほどメラトニンの分泌を抑制します。質は、青白っぽい光(晴天の正午の日光の色に近い)ほど分泌を抑制してしまう。深部体温もメラトニンの分泌が少ないほど下がりにくいことが確認できています」

■朝の光が生体リズムをリセット

 光の質は蛍光灯の種類でいうと、①昼光色②昼白色③白色④温白色⑤電球色の5種類がある。昼光色に近いほどメラトニン抑制の影響が大きく、電球色(赤っぽい光)に近いほど影響が少ないという。

 つまり、睡眠に備えた夜間の照明は、できるだけ暗くし、赤っぽい光(暖色光)で過ごした方がいいというわけだ。

 ただし、メラトニンの分泌が増えたり減ったりする時間帯のリズムは、人によって異なるという。

「メラトニンは、朝起きて太陽の光を浴びてから15~16時間後に分泌が始まるようになっています。ですから、何時に起床するかによって、その夜の分泌が始まる時間帯が変わってくるのです」

 たとえば、深夜労働をしている人が夕方に起きれば、その時がその人にとっての朝になる。睡眠リズムを崩さないためには、起きたら太陽の光に代わるような明るい照明(青白っぽい光)をきちんと浴びられる環境下で一日をスタートすることが大切になるという。

 また、生体リズムは1日25時間の周期で働いている。1日24時間との1時間のズレをリセットするのも、起床したときに目から入る光(普通であれば朝の太陽光)が行っている。