注射1本で動脈硬化チェック 注目の「LOX-INDEX」って何?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 注射1本で「動脈硬化のごく早期」をチェックできる「LOX-INDEX(ロックス・インデックス)」が注目されている。現在、全国600カ所の医療機関で実施されている。埼玉県済生会川口総合病院健診科・内藤直木科長(循環器専門医)に聞いた。

 脳卒中や心筋梗塞などの原因となる動脈硬化は、血管内皮細胞の慢性的な炎症によって起こる。この炎症はなぜ起こるのか?

「血管内のLDL(悪玉コレステロール)が活性酸素などによって酸化し、『酸化変性LDL』という物質に変わります。これが『LOX-1』というタンパク質と結合し、血管内皮細胞の炎症を引き起こすのです」

 酸化変性LDLとLOX-1は掛け合わせによって、相乗作用で動脈硬化のリスクを上げていく。つまり、動脈硬化のリスクをチェックするなら、酸化変性LDLとLOX-1の掛け合わせの数値を調べればいい。それを可能にしたのが、ロックス・インデックスだ。

「動脈硬化のリスクを調べるならほかの検査もあるだろう」と思うかもしれない。MRIやCTなどの画像検査、心・頚動脈エコーなどの伝播脳波検査がある。

「しかし、これらで異常が見つかるのは、動脈硬化がかなり進行してからで、治療の介入としてはベストの時期ではありません」

■他の検査では測定不能

 血液検査などの一般生化学検査もあるが、LDLは測定できても、酸化変性LDLとLOX-1はわからない。LDLそのままでは血管内皮細胞の炎症を引き起こさないので、ロックス・インデックスなら、さらに一歩踏み込んだ検査ができるというわけだ。

 動脈硬化をごく早期から治療すべきなのは、脳卒中や心筋梗塞といった脳血管疾患の回避が目的。脳卒中の年間患者数は130万人で、そのうちの3人に2人は死亡か重度の後遺症を抱える。また、働き盛りの突然死の死因の7割は心筋梗塞で、心筋梗塞の死亡者の25%は1回目の発症で突然死するといわれている。

「30~79歳の約4700人中、冠動脈疾患および脳卒中の既往歴がない約2400人を11年間追跡調査した本邦での疫学研究では、ロックス・インデックスの値が高い人は脳梗塞(脳卒中のひとつ)の発症率が3倍、心筋梗塞では2倍という高い数値を示しました」

 動脈硬化は進行すれば、治療を受けても元の健康な血管の状態に戻すことができない。しかし、ロックス・インデックスで判明する「動脈硬化のごく早期」であれば、食事や運動などの改善で健康な血管を取り戻せる。

 ある33歳の男性は、1年前は深夜までの仕事、脂肪過多の食事と間食、運動時間がないという生活だった。

 たまたま受けたロックス・インデックスで高リスクと判定。受診後、脂肪と炭水化物の摂取を減らし、野菜を特に夜多く摂取。深夜の間食を減らし、時間を見つけてウオーキングなどの運動をするようにしたところ、体重が7キロ減ってベストの状態になった。改めて受けたロックス・インデックスでは、低リスクに近い中リスクという判定だった。

「40歳以上で、喫煙者、肥満、閉経の人、高血圧、脂質異常症、糖尿病、血縁家族に脳卒中、心筋梗塞にかかった人がいるようなら、ぜひ一度は受けてください」

 保険は適用されない。川口総合病院では、心臓への負荷を示すBNP値測定と合わせて1万2800円だ。

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