病院は本日も大騒ぎ

病室に乗り込んできた愛人

 ある日、個室の前を通り過ぎようとしたところ、言い争う女性の声が廊下に漏れてきました。

 不穏を感じて入室すると、酸素マスクをつけてベッドに寝ている患者さんを挟み、50代の奥さんと40代の女性2人がにらみ合っています。

 私が入室したことに気がつき口論をやめたのでしょう。静寂のなかに重い空気が漂っていました。

 やがて40代女性が帰った後、奥さんから再び個室に呼ばれ、悲痛な相談を受けることになりました。

 病室でその女性と初めてお会いしたそうですが、これがご主人の愛人だといいます。長く付き合っていたことを告げられ、お詫びの言葉はなし。しかも、「葬儀は私の家でやりたい」と強く主張したそうです。

 ご主人に愛人が存在していたことはうすうす知っていたそうですが、初対面でいきなり葬儀を持ち出されたことで気が動転し、つい喧嘩になってしまったと、泣き崩れていらっしゃいました。

 申し訳ありませんが、こうした難題に看護師は役に立ちません。

 冷たいようですが「相談をされても、どう返答していいのかわかりません。2人でよく話し合ってください」と申し上げるのが精いっぱいでした。

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