これまで、患者さんの「行く末」を示す数字のさまざまな見方を示してきましたが、今回からはそうした数字がどのような研究に基づいているのかを見ていきましょう。
医療にかかわる数字のカラクリを明らかにして、「数字にだまされないようにしよう」というのが本連載の目的です。しかし、「だまされない」ためには、ここまで取り上げてきたような数字の読み方だけでは不十分です。その数字をはじき出したもとの研究の方法に問題があると、いくら結果の数字を詳細に読み込んでも意味がありません。
もとの研究がしっかりとしたものであるかどうかの吟味が、「数字にだまされない」ためのもうひとつの重要なポイントです。
例えば、6カ月以上生きた進行がんの患者さんたち100人を調べたら、全員がAという治療を受けていたとしましょう。Aで治療すれば1年後の生存率は「100%」ということでしょうか。
もちろんそういう可能性はあります。しかし、そうとも限らずまったくデタラメということもあります。
その一例をあげてみましょう。先ほどと逆に、6カ月以内に亡くなった進行がんの患者さんを調べてみたら、これまた全員がAという治療を受けていたとしたらどうでしょう。これでは有効な治療とはいえません。生きている人だけを調べれば生存率は100%です。つまり「生き残った人」だけでなく、「亡くなった人」も全部調べる必要があるということです。
多くの医療の情報が、生き残った人たちだけを調べ、“生き残った人はこんな治療をしていた”なんてやっています。気を付けましょう。慣れれば簡単に見破れます。
医療数字のカラクリ