役に立つオモシロ医学論文

死亡リスク低下? 人生に目的意識のある高齢者は長生きする

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「人生の目標をしっかり持つことが大切」と言われた経験はないでしょうか。「何のために生きているのか」と感じるのは、程度の差はあれ誰しも経験することです。「生きる目標」「生きる目的」を明確に持って日々努力している人は、自分が何のために生きているのか、その答えをしっかり持っているようにも思えます。

「目的意識を持って生きることが、死亡リスク低下に関連する」とした興味深い論文が、米国心身医学会誌2015年12月電子版に掲載されました。

 この論文は人生における目的意識が、死亡リスクや心臓病発症などにどのような影響を与えるのか検討したものです。10の前向き観察研究を統合解析しており、13万6265人が解析の対象となりました。

■65歳を超える高齢者で顕著な結果

 その結果、死亡のリスクは、「目的意識の低い人」に比べて、「目的意識の高い人」で17%、統計的にも有意に低下しました。心臓病の発症も同様に、17%低下するという結果になっています。日本人のデータのみの解析でも、死亡リスクが19%低下するという結果になっており、目的意識の高い人は、わずかながら長生きできる可能性が示されています。特に65歳を超える高齢者では37%もの死亡リスク低下が示唆されており、年を取っても目的意識が高い方が、長生きできるかもしれません。

 日々の生活を充実したものにするためにも、目的を持って生きるのは決して悪いことではないといえます。目的を達成するために努力することは、健康面でも良い影響があるのかもしれません。

 それが人生の幸福につながるかどうかは別問題かもしれませんが、年の初めですから、今年1年の目標を立ててみるのもいいでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。