ところが90年代に入ると、外科治療に「低侵襲」という方向性が登場しました。治療の負担を軽減し、より患者さんの体にやさしい治療法を推し進める流れが強くなってきたのです。
心臓手術でいえば、「MICS(ミックス)」と呼ばれる方法が現れました。胸骨を大きく切らない小切開手術で、すべて内視鏡を使って処置するケースもあります。「体の負担が少なく短期間で退院できる」といったメリットが喧伝され、実施する外科医も増えています。
しかし、問題があるのも事実です。小さく切開した範囲の中で従来と同じような手術を行うわけですから、当然、難易度は上がります。視野は狭くなり、手技も制限を受けるので、それだけ手術時間も余計にかかることになるのです。これまで外科治療が進歩してきた方向性とは逆行しているといえます。
■必要ない患者に実施されるケースも
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」