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【糖尿病の持続血糖モニター】東京慈恵会医科大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科(東京都港区)

東京慈恵会医科大学附属病院の西村理明准教授
東京慈恵会医科大学附属病院の西村理明准教授(提供写真)
血糖値の24時間モニターで低血糖を発見

 糖尿病の治療では、一日のうちに、いつどのように血糖値が変動するかを把握することが重要である。特にインスリン治療(注射)をしている患者の場合には、血糖値が下がり過ぎると低血糖による意識障害などを引き起こす恐れがある。

 国内の糖尿病の最新治療を常にリードしてきた同科では、血糖値の24時間の変動を調べる「持続血糖モニター(CGM)」を用いて、個々の患者の血糖変動に合わせた“テーラーメードの治療”を行っている。

 同科の西村理明准教授(写真)は、保険適用(2010年)になる前からCGMを治療へ応用し、国内の普及に努めている第一人者。CGMの特徴をこう説明する。

「いま一般的に広く用いられている血糖自己測定は一日の測定回数に限度があり、その情報は点でしかありません。CGMは、自己測定のできない睡眠中や明け方、多忙な仕事中などの状態まで把握できるので、血糖変動の一日の流れをグラフとして見ることができるのです」

 CGMは、測定器本体と電極の付いたセンサーで構成され、センサーの先端を患者の腹部につけるだけ。5分ごとに皮下の糖濃度を測定し、そのデータが本体に記録される。一日最大288回測定でき、連続6日間のデータが記録可能。センサーをつけたまま入浴もできるという。

「たとえば、インスリンによる治療中で、深夜に低血糖、日中に高血糖を示す血糖変動が見られたら、寝る前の持続型インスリンの量を減らせば低血糖の反動による血糖上昇がなくなるので、昼間の高血糖が改善します。このように、どのタイミングでどの種類・量のインスリンを使えばいいか、個々の患者さんの血糖変動に合わせて治療の最適化が図れます」

■保険適用なら3割負担で1回5000円

 夜間睡眠中の低血糖は、認知症の発症や突然死につながる恐れがあるという。24時間心電図や24時間血圧計と同じように、隠れた低血糖や急激な血糖上昇をあぶり出すことができるのがCGMなのだ。

 また、血糖値の日内変動を調べておいた方がいいのは、何もインスリン治療をしている人だけではないという。

「飲み薬で治療している患者さんでも、血糖コントロールがうまくいかなくて、低血糖(冷や汗や頻脈など)を起こしているようならCGMをお勧めします。特にSU剤(スルホニル尿素薬)は低血糖を起こす確率が高いので、必要に応じて調べた方がいいと思います」

 CGMにかかる費用は1回、3割負担で5000円ほど。また、昨年4月にはCGMとインスリンポンプが一体化した機器も保険適用になっている。インスリンポンプとは、24時間連続して超速効型のインスリンを少量注入する携帯型の小型機器。CGMと一体化したことで、より安心してインスリン治療ができるようになった。費用は月約4万円(3割負担)と高額になるが、血糖コントロールが困難な患者で希望があれば対応しているという。

■東京慈恵会医科大学の本院(1882年開院)
◆スタッフ数=医師10人
◆年間初診患者数=約500人
◆糖尿病の外来患者数=常時約6500人
◆持続血糖モニター実施数=年間約100件